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ガンダムOOの二次創作(小説)サイトです。基本はロクティエ。迷い込まれた方は速やかに、回れ右!をお願いします。
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連載(多分、長編)
「雨が降る」のプロローグです。
設定カテゴリーに、簡単な説明文がありますが、読まなくても全然OK!です。
ただ、二つだけご注意を。

 ティエリアは女性です。
 内容は必ずしも、明るく甘く幸せではないかもしれません。


それでは、どうぞ。




雨が降る。
見上げた空から降ってくる雨もあるが、何時も自分の心の隙間に振り続ける雨。
すべてを洗い流したくても、出来ない。
忘れてしまいたい出来事や、無かった事にしてしまいたい過去、犯した罪。
それでも、時は待ってはくれない。
どんなに悔いても、どんなに泣き叫んでも、許しを求めても、
何も知らないかのように、無常な雨が降る。


               ※


仕事を終えた後は、決まってこの盛り場をうろつく。
浴びるほど酒を飲んで、今日一日を消し去ってしまいたいこともある。
見知らぬ女を抱いて、まったく違う風景の中で違う自分になって目覚めたい事もある。
そんなやりきれない夜。
決まって、彼はここへ来る。


通りを外れ、見慣れた脇道に差し掛かったところで、ロックオンはふと足を止めた。
馴染みの看板の前に数人の人だかりが見えたからだ。
いかにも風体の疑わしそうな男達が、なにやら一人の人物を取り囲み口々に嘲りの言葉を浴びせていた。
真ん中で蹲っているのは、まだ小柄な子供のような体つきをした人物。
しゃがみこみ、俯いたその顔は窺えないが、サラリと揺れる紫色の癖のない髪が...その隙間から覗く透けるように白い肌が、これは女だとロンオンに直感的に感じさせた。
店の名前は「プトレマイオス」。
この界隈では名の知れたその道の店、つまり女が自分自身を売り物とする商売で成り立っている店。
野次馬達の肩越しに、背の高いロックオンはそこで繰り広げられているドラマを見詰めた。
人のいい店の女将が、男達相手に威勢のいい啖呵を切って少女を庇っている。

「やめなさい! この子はそんなんじゃないんだから!」

どうやら、柄の悪い客が商売女に無理難題をふっかけ因縁をつけている良くある光景とは、事情が違うようだ。
騒ぎが大きくなる事に焦りを感じ始めている女将が、巡らせた視線の先に見慣れた男を見つけて目を輝かせた。
人波を潜って、彼女はロックオンのところまでやって来る。
腕を引かれ身を屈めると、耳元で助けを求められた。
男達はまだ、例の少女に絡んでいる。

「ねえ、助けてよ。困ってるの。見たらわかるでしょう?」
「俺は店の用心棒じゃないからなあ...」
「もう、だから何度も言ってるじゃない、雇うわよ、って!」
「アレルヤはどうした?」
「あの子、出かけてるのよ....こんな時に限って...」

女将は長くボリュームのある髪を揺らせ、豊満な体を捩って訴える。
動くたびチラリと覗く胸元は、大きく抉れた衣装のせいも合間って、男の目には毒だ。
はて、どうしたもんか...と、ロックオンが考え込んでいると、人だかりから急に悲鳴が上がる。
続いてそれまで優勢だったはずの無頼漢たちが、次々と投げ飛ばされ宙を舞った。
野次馬達が逃げ惑い、地面にしたたか身体を打ちつけた男達は腰を抜かしたように這いずり回っていた。

「とっとと、失せやがれ! 二度とくんじゃねんえよ、この薄汚い輩が!!」

左目を長い前髪で隠した長身の男が、金色の瞳をギラつかせながら凄んでみせた。
あっという間に人波は引き、黒尽くめの衣装のその人物と、地面に力なく座り込む少女の二人だけが取り残される。

「あ、アレルヤ! 助かったわ....ありがとう」

女将が満面の笑みを浮かべ、頼りにならないロックオンを軽く突き飛ばしてから、弾かれたようにアレルヤという男の元へと駆け寄る。
アレルヤは既に普段の温厚な顔つきに戻っていた。先ほどの男達を追い払った顔と声は別人のように、少しはにかんだような笑みを見せる。

「すみません、遅くなってしまって...」
「ううん、いいのよ。やっぱり貴方のが頼りになるわね...」

さり気ない嫌味と視線を当てつけの様にロックオンへと寄越し、フンとそっぽを向いて見せた。
やれやれ、と肩を竦めたロックオンは、すっかり気分をそがれてしまい当初の目的も忘れてその場を去って行く。
背後で、二人の男女の会話を聞くともなしに耳に入れながら。

「この子、今朝方の子ですよね...まだ、こんなところをウロウロしてるんですか。危ないって忠告したのに....」
「それがねえ、困った事に、この子行く宛がないみたいなのよ」
「ええ~、どうすんですか?」
「まさか、店で働かせるワケには行かないしねえ」
「まだ、子供ですよ」
「そう、だから、ねえ?」


その数日後、女将の店で再会するまで、ロックオンの記憶にはこの時の少女の事など欠片も残っていなかった。
ただ、職業柄人並み外れた視力と勘の良さが、彼女は世間一般の少女とは何かが違うぞと、そう告げていた。
それが、今後の自分達の人生を大きく変えていく事になるのも、この時の彼らには知る由も無い。




※想像以上に、長くなりました。当初は短編だったので。
いや、最初は、アレルヤ達は出てくる予定では...(笑)
女将はスメラギさんです。今後店の下働きに、フェルトとか出てくる予定。
そして、本編にはまだご登場しないあの方、ロックオンとの関係は?な方とか....。
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非公開
職業:
   猫好き
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   読書、ものを作ること
自己紹介:
ガンダムOOのパロディ小説がメイン。
基本はロックオン×ティエリア、甘くはないです。
更新はマイペース。気長にのんびり、大きなお心でお付き合い頂けると嬉しいです。
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