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もう、誰も覚えてないかもしれない...時の果てで(最終話)
ずっと気になっていたので、とりあえずこれを仕上げてから、次を書こうかと。
このお話は、最初はポエムの予定だったんです。
ティエリアの独白で、ロックオンへの心情を綴るためのものだったのに...。
1期と2期の間に書いたものでもあるし、まだ2期がどうなるのかわからない状態での内容なので、全てが曖昧です。
ラストに出てくるのは、もちろん、ライルさんです。
彼がやってくるまでに、実は、もう一人「ロックオン候補」がいたんだよ、という妄想です。
どこをどう帰って来たのか。全く覚えてなどいない。
気がつくと、私はカタパルトへ収容されるための誘導システムに同調していた。
体が覚えた操作。無意識に動く腕。指先がパネルの上を滑る。
画面に映し出される文字を確認して、目を閉じ、身を委ね、静かに息を吐いた。
先ほどまで、ひどく懐かしい声を聞いていた気がする。
朦朧とした脳裏に心地よく響く、そこにいる筈のない彼の声。
――ソレスタル・ビーイングの偵察艇だな?
早く、この場を去れ。仲間の所へ戻るんだ。グズグズするな。
一目でソレスタル・ビーイングだと気づいた。
相手は、私が何者か、察したのだろうか。
――...ああ。お前だけでも無事だったんだ。だから、早く行け。
混乱する意識の中で、私は何かをひたすら口走っていたらしい。
それは、通信相手の彼の名なのか。それとも、今目の前で散った彼の名か。
宥めるような、あやすような言葉が、淡々とした口調で流れ込む。
そうだ。優しいくせに愛想のない、無口で、不器用で。
あの男だ。紛れもなく。
エクシアのパイロット。同じガンダム・マイスターの一人。
生きていた。
生きていてくれた。
無事で、そしてあの場に私と同じように現れた。
神よ。
何事もなかったかのように日々は過ぎていく。
結局、私以外の誰もあの若いマイスター候補の存在は知らない。
人選は白紙に戻った。
やがて新造の母艦が出来上がる。
あの戦いで失われたガンダム達それぞれの後継機も、順に上がってくる。
計画は再び動き出すのだ。変わりゆく世界と共に。
あの頃とは違う。自分たちの意志で。
ヴェーダを失った手探りの状態。
見えぬ敵を模索する。
思うように動かない新システム。
去って行った仲間と、未だ帰還せぬマイスター達。
問題は山積みだった。
宇宙を漂う白い花。私の手をすり抜け、漆黒の闇へと消えていく。
幾つも、幾つも。
名前も知らない花だが、仲間たちが密かに育てていると聞き、分けてもらった。
背後で何も知らないはずのフェルトが、静かに無重力の中を滑っていく白いそれを見つめていた。
「奇麗ね...でも、悲しい色。何にもない、色」
「そうかな。何ものにも染まらない色だ。恒久の平和を求める、数多の命の色」
「死んでいった仲間たちのため?」
「全ての命に...」
「手紙を書くわ、また」
「...そうだな...届くといいな」
この思いが伝わるのなら、どうか。
無垢なる魂に、安らかな眠りを。
死者がその後何所へ行くのか、肉体を失った魂が何所へ辿り着くのか。
誰も答えてはくれない。
大切な人がいなくなるのは、何時も宇宙だ。
ロックオン、貴方も宇宙の彼方に消えた。
守ろうと思っても、引き止めようとしても、無力な私はむざむざと彼を見失った。
名前すら聞かなかったあの彼も。
生きて、無事に仲間に、四人目のマイスターになっていたなら、どんな名を名乗ったのだろうか。
かつて志を同じくした仲間たちも、やはりこの宇宙に散っていった。
だが、彼らに出会ったのも、また宇宙だったのだ。
やはり、貴方は。
貴方がたは、ここにいるのかもしれない。
細い雨が地面を容赦なく叩き、険しい道をさらに歩きにくいものにする。
一歩、また一歩と踏み締めるたび、己の体重と背負った罪の重さに沈む。
これが、人間の重み。
生きて存在するということ。
この身体のある限り。
待っていてください。
何時の日か、時の果てで、再びめぐり会うまで。
永遠に一緒になれる、その日まで。
私を物陰から窺っていた緑色の瞳があったことは、知らない。
マイスターが再び四人揃うのは、この数か月の後の事になる。
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基本はロックオン×ティエリア、甘くはないです。
更新はマイペース。気長にのんびり、大きなお心でお付き合い頂けると嬉しいです。